新・身近な科学

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再来年もヘイ!

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは!NSIの岩山です。

昨日に引き続いての登場ですが、今日も「恵方」に関する豆知識をご紹介したいと思います。
また自然科学からちょっと離れたお話ですが、ご容赦くださいませ。
べ、別にネタ切れってわけじゃないんだからね!(2回目)

さて、昨日もお伝えしたとおり、今年の恵方は「丙」でしたね。
なんのことかわからない方は、ぜひ昨日のエントリを見返してみてください。

nsi.hateblo.jp

で、来年の干支は「壬(みずのえ、またはジン)」です。
わかりやすいけれどやや厳密さを欠いた表現では「北北西」となります。

では、再来年は?

今年が南寄り、来年が北寄りなので再来年は東か西か・・・と思いきや、再来年の恵方は再び「丙」です。

実は、恵方は5年周期で巡っていて、甲→庚→丙→壬→丙→甲→・・・とサイクルしています。
例のわかりやすい表現では、東北東→西南西→南南東→北北西→南南東→東北東→・・・です。

5回のうち「丙」が2回出てくるため、恵方は4種類しかないことになります。
歳徳神様は行きつけの場所が決まってるんですねぇ。

というわけで、今日の「明日話したくなる(科学?)豆知識」は、
恵方は4種類しかない
でした。

ヘイ!

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは!NSIの岩山です。

さて、アドベントカレンダーといえば12月の風物詩ですが、時期が決まっているためその内容がどうしても年末に寄ってしまいますよね。
そんな風潮に一石を投じるべく、今日はあえて年始っぽい内容のお話をしたいと思います。

※あらかじめお断りしておきたいのですが、今日の内容はいわゆる「科学」からは若干遠いものとなっています。まぁ「人文科学」的な感じで、広く捉えれば「科学」だということでひとつよろしくお願いします(^^;)
べ、別にネタ切れってわけじゃないんだからね!

さていつからか、2月3日の節分に恵方巻きを食べることがすっかり定着した感がありますね。
スーパーやコンビニなんかで「今年の恵方は○○」と見かけるのも普通になりました。
ところでみなさん、今年の恵方は覚えていますでしょうか?
・・・おそらく、ほとんどの方が首を横に振るのではないかと思います。
もちろん私も、このエントリを書くに当たって改めて調べました(^^;)

今年(2016年)の恵方は南南東です。
・・・と言いたいところなんですが、実はこれ、(厳密に言うと)間違いなんです。

どういうことか説明するためには、そもそも「恵方」とは何かを知らなくてはなりません。
恵方」は、陰陽道で福徳を司るとされる「歳徳神(としとくじん)」がいる方角のことです。
歳徳神は女性の姿で描かれることが多いのですが、彼女が毎年居場所を変えるため、恵方も毎年変わります。

で、陰陽道で用いられる方位は、全周を24分割した「24方位」なんです。
一方、「南南東」といった表記は「16方位」で、24方位よりも粗い分け方です。
そのため、「南南東」表記では24方位を表し切れないということになります。

じゃあなんで恵方をその24方位で言い表さないのかというと、おそらくですが、わかる人がほとんどいないからだと思います。
ちなみに2016年の恵方を正しく言うと「丙(ひのえ、またはヘイ)」ですが、まったくピンと来ませんよね(^^;)

24方位を表すのには、十二支、八卦、それに十干が出てきます。
詳細は割愛して最終結果だけ表したものが下の図です。
参考までに16方位も記載しました。

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赤・青・黄がそれぞれ十二支・八卦・十干由来であることを表しています。
とても複雑で覚えきれないですよね。
今年の恵方の「丙」と「南南東」は図の下の方にありますが、このくらいのずれなら「南南東」表記に軍配が上がるのもむべなるかな、と思います。

というわけで今日の「明日話したくなる(科学?)豆知識」は、
今年の恵方は丙(ヘイ)!・・・とすると楽しげで良いのですが、やっぱり誰にも伝わらないと思うので、おとなしめに
「今年の恵方は南南東」は(厳密に言うと)間違い
としたいと思います。

自分を食べる!?~オートファジーのお話し~

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。


 記事の掲載が遅くなってしまいました。大変申し訳ございません。

 さて,本日の記事を担当する寺前です。大学で理科教育や解剖学などを教えています。大学院では,顕微解剖学といって顕微鏡を使って体の構造などを調べる分野の研究をしていました。そこで,今年話題になった自食作用,すなわちオートファジーについて本日は紹介したいと思います。

 オートファジーはもともと細胞内に小胞という小さな袋が作られるという現象が電子顕微鏡で観察されたことに端を発します。

 私たちは,毎日食事をして栄養分を体内に取り入れています。でも,何らかの原因で食事ができない状況が続くとどうなるでしょうか? 体は,生命を維持しようとします。心臓や脳は動かし続けなければならない訳ですから,なんとか栄養分を確保しようと努めます。その結果,細胞内にあるものを再利用しよう・・・となります。その再利用のシステムこそがオートファジーです。

 最近では,飢餓状態で栄養を確保しようとする働きだけでは無く,病気の予防であったり,生命の維持に深く関与しているということが解明されつつあります。

 アンパンマンは,おなかをすかせている人に自分の顔を食べさせてあげますが,オートファジーは自分の体の中で,自分の体を栄養分にしようと働いてくれています。
 適切な場所で,適切な量のオートファジーが起こっていることは何ら問題にはなりません。多くの動物でオートファジーが起こっていることが報告されています。
 日本人のノーベル生理学・医学賞の受賞を誇りに思い,さらなる研究につながることを祈っています。


 私自身も,オートファジーの研究を進めています。さらに詳しい説明を聞きたい方は,是非ご一報をください。

殻を振り回して敵をKOするカタツムリがいる!?

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」
(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは!NSIのぐっさんです。

最近、北海道大学のグループからこんな研究報告がありました。

「殻を振り回して敵をノックアウトするカタツムリを発見」
http://www.hokudai.ac.jp/news/161114_farm_pr.pdf

私はおもわず「!?」となってしまいました。
といいますのも、カタツムリといえば「殻で外敵から身を守る」生き物だと思っていたからです。
おそらく多くのみなさまがそうなのではないでしょうか。

ところが、その殻を振り回して敵を攻撃するカタツムリがいたのです!
予想外の能力をもつ生き物がまだまだ地球上にいるかも、と期待させてくれる発見でした。

というわけで、今日の「明日話したくなる科学豆知識」は、
殻を振り回して敵をノックアウトするカタツムリがいる!
でした!

ポリオミノ

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。


こんにちは。NSIの小川です。

NSI(科学勉強会)では,時折,有志のメンバーでリアル脱出ゲームというイベントに参加して遊んでいます。リアル脱出ゲームとは,名前のとおり,始めに実際に部屋等に閉じ込められ,参加者で協力して謎を解いて脱出を目指す,体験型イベントです。

さて,こういったイベントに参加すると,よく以下のような「正方形をいくつか組み合わせた形のピースを複数用いて,枠内(多くの場合は長方形)に収めるパズル」に出くわし,苦しめられることがあります。
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このパズルについて,何か攻略法はないだろうかと調べていくうちに,このパズルが「ポリオミノ」と呼ばれており,思っていたよりも奥が深いものであることが分かったので,今日はこの「ポリオミノ」についてご紹介します。

古くからパズルとして全世界で親しまれてきました「ポリオミノ」ですが,初めてこの語が用いられたのは,数学者ソロモン・W・ゴロムが,1954年に発表した論文「Checker Boards and Polyominoes」だと言われています。

彼は,接頭語「poly」と「omino」(ドミノdomino=di(2)+ominoから)を組み合わせて「polyomino」との造語を考案,n個の正方形をつなげた形をn-オミノ(nにはギリシア語の接頭辞が入る)と呼びました。

ここでテトリスを想像してください。あれは,正方形を4つつなげたn=4の「テトロミノ(tetra=4)」ということが出来ます。では,テトロミノは何種類存在するのでしょうか?(裏返すと同じ形になるものは1種類とカウントします。)

答えは5種類です。
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では,ペントミノ(penta=5)はどうでしょう?

答えは12種類です。このあたりまでなら,まだイメージも付きますが,以下,ヘキソミノ(hexa=6)35種類,ヘプトミノ(hepta=7)108種類,・・・と加速度的に増えていき,n=10では1285種類,n=15では100万種類近くなります。2015年時点ではn=45の場合の種類数まで計算が進んでいるようですが*1,研究の対象となって60年以上経過した現在でも,その法則性については未だ明らかになっていないようです。

私が一番面白いと思ったのは,ペントミノ(面積5)12種類の全てを使って,面積60の長方形すべて(6×10,5×12,4×15,3×20)*2にぴったりと収めることが出来るそうです。なお,6×10の長方形には2339通りの収め方があるのに対し,3×20の長方形には2通りの方法でしか収めることはできないそうですので,皆さんぜひ考えてみてください。

以上,今日の「明日話したくなる科学豆知識」はポリオミノは,数学的研究対象にもなっているが、その法則性は未だに明らかになっていない」でした。

ところで個人的に一番知りたかった攻略法については,コンピュータ解析は進んでいるようですが,リアル脱出ゲームの際に自力で使えそうなものは見つけることが出来ませんでした。やはり習うより慣れろということなんでしょうか。

*1:「ガードナーの数学パズル・ゲーム」,マーティン・ガードナー著,日本評論社,2015

*2:最大辺の長さが3のペントミノがあるため,2×30,1×60は当然除外しています