新・身近な科学

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紙焼けの主な原因は紫外線によるリグニンの変色

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識3」(http://www.adventar.org/calendars/999)の一環として書いています。

こんにちは、NSIの清水です。
そろそろ年末が近づき、大掃除を始めている方もいるかもしれませんね。
不要になった書類や本、新聞紙などが大量に出てくることもあるかもしれません。
そんなとき、紙が黄色く変色しているのを見かけることはないでしょうか?
今回は、そんな大掃除中に見かけるかもしれない、紙焼けという現象についてお話します。

さて、この紙焼けという現象、字面からすると紙が焦げていると
勘違いしやすいですが、焦げているわけではありません。
紙に含まれているリグニンという物質が、化学変化を起こしていることが原因なのです。
「じゃあ、リグニンを紙に入れなければいいじゃないか」と思いますが、
そうもいかない理由があるのです。

紙は木や草の繊維を原材料とした、古くから存在する加工品です。
日本工業規格では「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されています。
(そう、たとえ金属繊維で出来ていても定義的には紙なのです!)

木や草でいうと、セルロースという物質が繊維にあたります。
問題は、このセルロースという繊維に絡み付いている物質があること。
それこそが、変色の原因となるリグニンなのです。
つまり、紙の原材料である木や草自体に、大量に含まれているのです。

製紙の工程において、このリグニンの分解は非常に重要な部分です。
絡み付いているリグニンをうまく分解しなければ、セルロースを繊維として使えません。
また、リグニンは無色ではないので、含有率が低いほど白く上質な紙になります。
しかし、リグニンを分解するのはコスト的にも技術的にも面倒で、紙にある程度残ってしまうのです。

このリグニン、何もしなくても少しずつ反応を起こして変色していきますが、
紫外線が当たると反応が加速します
美術館などに行くと、展示品の保護のために照明が暗くなっていることがありまが、
これは太陽や蛍光灯などから出る紫外線によって展示品が劣化してしまうことを防ぐための工夫なのです。

ということで、紙焼けの主な原因は紫外線によるリグニンの変色だったのです。
賞状やポスターを壁に張っておくときは、直接光が当たらない場所にしましょう。
そうすれば、紙焼けの進行を遅らせることができますよ!