新・身近な科学

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液体を量り取る桝(1) ~ 一般的な桝の場合 ~

こんにちは!NSIの岩山です。

3月といえば、卒業のシーズンですね。
私たちNSIでも、この春大学を卒業するメンバーに向けての「追いコン」を先日開催しました。
そのときに実施した「卒業寸劇」の題材にした内容について、今日明日の2回に渡ってお話ししようと思います。

「卒業寸劇」とは、台本と小道具だけ用意しておいて、卒業生に初見でそれをやらせるという企画でした。
題材は、追いコンに参加した卒業生2人がともに日本酒好きだったことから、「枡」を選びました。
今日のこのエントリでは一般的な枡のお話をして、明日、卒業寸劇でやった内容をお話しすることにします。

では本題です。

枡と聞いてみなさんが思い浮かべるのは、直方体の形をしたものだと思います。
そして、目盛などの体積を量る目安となるものは何もついていませんよね。
その枡で量り分けることができる体積は何種類あるのでしょうか?

単純に考えると、一杯に入れるだけしかできないんじゃないかと思いがちですが、もう少し細かく量り分けることができます。

状況として、酒屋さんがお客さんにお酒を売るところを想像してください。
枡を使って、大きな酒樽からお酒を汲み出し、客が持参した容器に希望の量を注いでいるところです。

条件を以下のように設定します。

  • 枡は直方体
  • 目印にできるのは辺と角(かど)のみ
  • 目盛など、他に目印になるものはついていない
  • 酒屋が酒樽から酒を汲み出せるのは1回だけ

最後の条件は、「最小単位の枡で汲み出しを複数回繰り返す」という何の面白味もない解を防ぐためです(^^;)

この条件の元、枡の中で液体が取ることができる状態は、一杯入った状態のほかにもう2種類あります。
下記の4通りです。
※以降、表記を簡単にするために枡一杯の体積を6とします。

・枡一杯(状態6とします)
f:id:nsi_sapporo:20160316214428j:plain

・半分(状態3)
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三角錐(状態1)
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※状態3の三角柱と底面・高さが共通の三角錐になっています。

これで、6・3・1の3種類の体積をあらわすことができました。

しかし、この3通りが量り取れる体積のすべてかというと、そうではありません。
もう少し工夫することで、量り取れるパターンを増やすことができます。

ある状態からある状態へ遷移させた場合を考えてみます。
状態間の遷移は、実際の酒屋さんの動作として考えると、枡からどこかへ、2つの状態の差分だけお酒を移動させることに相当します。
「どこか」が客の容器であれば、その量を量り取っていることになりますし、元の酒樽へ戻すと考えると、ただ枡の中の状態を変えただけとみることができます。

状態6→状態3・状態3→状態1・状態1→空(から)の3つの遷移で、それぞれ差として3・2・1を得ることができます。
3・2・1を組み合わせると、6~1までの整数を表すことができますよね。

たとえば、
4=3+(0)+1
です。
状態6→状態3を客の容器に注ぎ、状態3→状態1で酒樽に戻し、状態1→状態0をまた客の容器へ注ぐという動作で、体積4を量り取れるということです。
つまり、直方体の枡一つあれば、6通りの体積を量り取ることができるということになります。

ずいぶん長くなってしまいましたが、まとめると

  • 直方体の枡では、6通りの体積を量り取ることができる
  • 枡の中の液体が取ることができる状態同士の差の組み合わせが、量り取ることができる体積を表す

となります。
特に2つ目の方は、明日の本題にも関わってくるのでぜひ覚えておいてください。

ではまた明日♪