読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

新・身近な科学

私たちの身近にある科学を解説します。NSI (科学勉強会) のウェブサイトはこちら http://tehiro.sakura.ne.jp/nsi/

液体を量り取る桝(2) ~ 万能三角桝の場合 ~

数学

こんにちは!NSIの岩山です。

昨日のエントリで、直方体の枡で量り取ることができる液体の体積についてお話ししました。
まだご覧になっていない方は、ぜひ目を通しておいてください。

前回のまとめで、

  • 直方体の枡では、6通りの体積を量り取ることができる

としましたが、6通りより多くのパターンを量り取れる枡はないのか?というのが次の命題です。
実は、「直方体の」という条件を外せば、もっと多くのパターンを量り取れる、高機能な枡にすることができます。
形状的に「枡」と言っていいかは微妙になりますが(^^;)

追いコンの卒業寸劇では、底面が三角形で、壁面が底面と垂直ではない形の枡を考えました。
その形状では、ある条件を満たすように設計すれば、何と実に127種類もの容量を量り取ることができるんです!

細かい条件をお話しする前に、どういった形状かお見せします。
f:id:nsi_sapporo:20160316220603j:plain

やっぱり桝には見えませんが、そこは気にしないでください(^^;)
一番高いところの高さがおよそ18㎝で、2.5ml刻みで317.5mlまで量り取ることができます。
(数字が中途半端なのは、計算ミスに気付かないまま設計してしまったためです)

さていよいよ、どういった条件でこの形を作ったのかをお話しします。
かなり長いので、お時間に余裕があるときに見ることをお勧めします(^^)


実は、この枡の底面から出ている3つの辺を底面側に延長すると、1点で交わるようになっています。
その交点をO、底面の三角形の頂点をそれぞれA、B、C、上の角をそれぞれA'、B'、C'とします。

f:id:nsi_sapporo:20160316223626p:plain

そして、それぞれの線分の長さの比を、
OA:OA'=1:2
OB:OB'=1:4
OC:OC'=1:16
となるようにします。

何と、たったこれだけの条件を満たすだけで、この枡は127通りの体積を量り取ることができる桝になるのです。


これから、そのことを証明します。
ちなみに、この枡も前回の直方体の枡と同様、

  • 目印にできるのは辺と角(かど)のみ
  • 目盛など、他に目印になるものはついていない

の条件に縛られています。

枡ABCA'B'C'に液体を入れるとき、取ることができる状態は7通りあります。
一杯まで満たした状態が1通りと、ABCの中から2点、A'B'C'の中から1点を選んでその3点を結ぶ面を水面とするやり方で3通り、ABCの中から1点、A'B'C'の中から2点選ぶやり方で3通りの計7種類が得られます。
ちょっと見づらいものもありますが、一杯以外の6通りの絵を以下に並べてみます。

・状態1
f:id:nsi_sapporo:20160317224454j:plain

・状態3
f:id:nsi_sapporo:20160317224502j:plain

・状態15
f:id:nsi_sapporo:20160317224510j:plain

・状態63
f:id:nsi_sapporo:20160317224521j:plain

・状態31
f:id:nsi_sapporo:20160317224527j:plain

・状態7
f:id:nsi_sapporo:20160317224533j:plain

先に状態名として書いてしまいましたが、数字は、三角錐OABCの体積を1としたときのそれぞれの状態の液体の体積を表しています。

例えば状態1の場合は、三角錐OABCと三角錐OA'BCで考えると、底面OBCは共通で、高さの比が OA:OA'=1:2 なので、体積比も1:2となります。
状態1は、三角錐OA'BCから三角錐OABCを除いたものなので、体積は1です。

状態3、状態15も同様の計算で求めることができます。

状態63についても三角錐OABCと三角錐OAB'C'との比較で考えるのですが、これら2図形に共通しているのは高さの方で、いずれもOAです。
底面は△OBCと△OB'C'ですが、この2つの面積比は、ヘロンの公式を用いて、共通の角を挟む2辺の長さの比の積となります。
状態63の場合は、OB:OB'=1:4とOC:OC'=1:16なので、面積比は1:4×16=1:64です。
すなわち、三角錐OABCと三角錐OAB'C'の体積比は1:64、状態63の体積が63と求まります。

状態31、状態7も同様です。

そして、一杯まで満たしたときの体積は127です。
上記2つの計算を組み合わせて求めることができます。

これでこの桝の中の液体が取ることができる状態をすべて求めることができました。
あとは、前回の直方体の桝の場合と同様、それぞれの状態の差を見てみれば良いのです。

体積の大きい順に状態を並べると、
127、63、31、15、7、3、1、(0)
となります。最後の0は空の状態です。

それぞれ隣同士の差を取ってみると・・・
64、32、16、8、4、2、1
となりました!

この並びには見覚えがある方も多いのではないかと思います。
そうです、2^6~2^0の各数字です。
つまり、7桁の2進数の各桁を表していると見ることができます。
7桁の2進数を10進数に直すと1~127となるので、この桝は1~127までの体積を1刻みに量り取ることができる、ということです。

ちなみに、この形の桝では、最大で7通りの状態までしか取ることができません。
つまり上記のように、2進数にして7桁までの127種類が、量り取れる体積の種類として最大です。

今回のお話は、以下の書籍を参考にしました。

この万能三角桝をふくめて、いくつかの形状の桝について考察してあります。
また、ほかにもいろんな題材についての話題が載っていてとても面白いので、ぜひ見てみてくださいませ(^^)


以下余談です。

この桝についてのお話は、NSIの追いコンで使うために調べました。
追いコンでは、実際にアクリル板でこの桝を作って卒業生にプレゼントしたのですが、やはり手での加工では精度に問題があり、せいぜいオブジェくらいにしかならない代物となりました。

そこで、ちゃんとしたものを手に入れられるよう、3Dプリンタで出力できるようデータを作りました。
しかも、最大容量317.5 ml・254 ml・127 mlの3ラインをご用意!
下記URLから、どなたでも注文することができます。
・・・が、なかなかのお値段になってしまっているので、ご購入はお勧めできません( ̄ー ̄)

make.dmm.com
make.dmm.com
make.dmm.com