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新・身近な科学

私たちの身近にある科学を解説します。NSI (科学勉強会) のウェブサイトはこちら http://tehiro.sakura.ne.jp/nsi/

世界に一つだけのビスマス

明日話したくなる科学豆知識

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。


こんにちは、NSIの辻です。

みなさんは「ビスマス」という金属を知っていますか?
高校の化学で扱われないため、あまり一般には知られていないかわいそうな金属ですが、実はとても魅力的な金属なのです。


ビスマスの結晶をお見せしましょう。きっと気に入ってくれるはずです。

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いかがでしょうか。思いの外インパクトがあったのではないでしょうか。


ビスマスの結晶は2つの際立った特徴を持っています。
1. きれいな虹色をしている
2. 独特な形状をしている

なぜこのような見た目をしているのでしょう。今日は1つ目に挙げた特徴「きれいな虹色をしている」について、その理由を考えていきましょう。


ビスマス結晶なぜきれいな虹色をしているのか

ビスマスの表面は、虹色のグラデーションをしています。モノによってもそのようすは異なります。

ビスマス結晶の表面の虹色を作るのは、ビスマスの素材の「地」の色ではありません。「薄膜干渉」と呼ばれる現象によるものです。

高校の物理学で「シャボン玉の薄い膜の干渉」について習ったのを覚えているでしょうか。膜の表面で反射した光と膜の内側の境界で反射した光との間に「厚み分の光路差」が生じて、両者の位相差によって強めあったり弱めあったりする現象です。膜の厚さによって、強めあう光の波長が変わり、強め合った光が我々の眼に届いているわけです。シャボン玉の色がころころ変わって見えるのは、膜の厚さが時間変化するためです。

ビスマスにおいても同様のことがおきています。ビスマス単結晶の周りに、酸化ビスマスの薄い膜がついています。この膜によって、シャボン玉同様に薄膜干渉が起こり、膜の厚さによって色が変化するのです。

ところで「シャボン玉と同じ薄膜干渉である」と言われると、その色のつき方の違いが気になりますよね。シャボン玉はぼんやりと色が見えるだけですが、ビスマスの結晶ははっきりと色がついて見えます。この違いは「金属光沢」によるものです。金属に侵入する光は表面にある自由電子によって全反射されるため、金属は非常に高い反射率(ほぼ100パーセント)を持ちます(これを金属光沢と呼びます)。金属光沢によって、きらきら輝いて見えるわけです。

まとめると、ビスマスがきれいな虹色をしているのは、
・酸化膜による薄膜干渉があって厚さによって強め合う色が変化する(虹色に見える)
・金属光沢がある(きらきら光って見える)
ということだったわけですね。

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こちらがお気に入りのマイ・ビスマス

おわりに

今回紹介したビスマスの結晶は、実は簡単につくることができるそうです。ビスマスの融点は 272 度と低く、家庭用のコンロでも溶かすことができるとのこと。興味を持った方はぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
portal.nifty.com

膜の厚さはビスマス結晶が冷やされて固まるスピードによって変わるようで、色のつき方は結晶によってばらばらです。まったく同じ色のつき方にはならないのです。まさに世界に一つだけのビスマスですね。

というわけで、今日の「明日話したくなる科学豆知識」は、

ビスマスがきれいな虹色をしているのは、薄膜干渉と金属光沢が原因である」
でした。

ビスマス結晶の独特な形状のなぞについては、またの機会に触れたいと思います。それでは。