新・身近な科学

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自分を食べる!?~オートファジーのお話し~

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。


 記事の掲載が遅くなってしまいました。大変申し訳ございません。

 さて,本日の記事を担当する寺前です。大学で理科教育や解剖学などを教えています。大学院では,顕微解剖学といって顕微鏡を使って体の構造などを調べる分野の研究をしていました。そこで,今年話題になった自食作用,すなわちオートファジーについて本日は紹介したいと思います。

 オートファジーはもともと細胞内に小胞という小さな袋が作られるという現象が電子顕微鏡で観察されたことに端を発します。

 私たちは,毎日食事をして栄養分を体内に取り入れています。でも,何らかの原因で食事ができない状況が続くとどうなるでしょうか? 体は,生命を維持しようとします。心臓や脳は動かし続けなければならない訳ですから,なんとか栄養分を確保しようと努めます。その結果,細胞内にあるものを再利用しよう・・・となります。その再利用のシステムこそがオートファジーです。

 最近では,飢餓状態で栄養を確保しようとする働きだけでは無く,病気の予防であったり,生命の維持に深く関与しているということが解明されつつあります。

 アンパンマンは,おなかをすかせている人に自分の顔を食べさせてあげますが,オートファジーは自分の体の中で,自分の体を栄養分にしようと働いてくれています。
 適切な場所で,適切な量のオートファジーが起こっていることは何ら問題にはなりません。多くの動物でオートファジーが起こっていることが報告されています。
 日本人のノーベル生理学・医学賞の受賞を誇りに思い,さらなる研究につながることを祈っています。


 私自身も,オートファジーの研究を進めています。さらに詳しい説明を聞きたい方は,是非ご一報をください。