新・身近な科学

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あまり知られていないヒトとサルの違い

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

科学勉強会の二世です。

2016年ももうあと何日かで終わりますが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
2016年は、干支で言うと申年に当たる年でしたね。

ところでみなさんは、ヒトとサルの違いをご存知でしょうか?

すぐに挙がることとしたら、
ヒトは言葉が話せる、道具が使える、直立二足歩行をする、
サルは木登りが得意…といったところでしょうか。

せっかくなので、今日はそこにもうひとつ豆知識を追加しましょう。

それは「サルは食べ物を飲み込みながら呼吸することができる」ということです。


その秘密は、ノド周辺の形にあります。

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注目は、青色で示した食道の入口(咽頭)と、赤色で示した気道への分かれ道(喉頭、いわゆる喉仏)の位置です。サルに比べて、ヒトの喉頭咽頭から離れてだいぶ下に位置しています。
このことによって、サルは舌の根元をうまく使うことで、ものを飲み込みながら(=食べ物や飲み物を口から食道に送りながら)呼吸をする(=鼻から空気を気道に送る)ことができるのに対し、ヒトでは同じことができないのです。
また、同じ理由でヒトの方が誤嚥(飲食物が誤って気道に入ってしまうこと)が起きやすいとされています。

こんな風に書くと、ヒトよりもサルのノドの方がよくできた形であるように聞こえてしまうでしょうか?

しかしヒトは、喉頭の位置が下がったことによって広くなった、のどから口の部分の空間を使って、声帯で震わせた空気を響かせて、いろいろな音を出すことができるようになりました。つまり、ヒトは喉頭の位置が下がったことで、複雑な言葉を使いこなすことができるようになったのです。

ものを飲み込みながら呼吸ができないという不便さは、言葉によるコミュニケーションを可能にするために必要な犠牲だったということですね。


以上、今日の豆知識は「サルは食べ物を飲み込みながら呼吸することができる」、またはヒトの側から見て「ヒトが食べ物を飲み込む時には呼吸が止まる」でした。

ちなみにヒトでも、乳幼児はまだ咽頭喉頭の位置関係がどちらかというとサルに近く、それゆえに、ミルクを飲みながら呼吸をすることが可能であるそうです。

申年はもうすぐ終わってしまいますが、よかったら食事の時にでも話題にしてみてください♪

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さて、今年もやっとアドベントカレンダーが終わりました。
アドベントカレンダー最終日がここまで延びてしまって申し訳ないです…。)

「明日話したくなる科学豆知識」シリーズももう4年目ですから、科学勉強会/NSIとしては新旧ブログにわたり計100記事を書いてきたことになります。

参加・執筆した方はお疲れさまでした。
読んでくださった方はありがとうございました。

来年もアドベントカレンダーを企画するかどうかは未定ですが、そろそろまた新しいスタイルに挑戦するという手もあるかと考えています。

ともあれ、科学勉強会/NSIは来年もマイペースにがんばっていきますので、今後ともよろしくお付き合いください。

それではよいお年を〜。