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新・身近な科学

私たちの身近にある科学を解説します。NSI (科学勉強会) のウェブサイトはこちら http://tehiro.sakura.ne.jp/nsi/

試行錯誤とその先にあるもの 〜はるにれ実験教室2015まとめ〜

こんにちは、NSIの二世です。
去る2015年6月6日(土)〜7日(日)、第57回北大祭の一企画として「求ム 失敗する勇気 〜はるにれ実験教室2015〜」を開催しました。

今年は「試行錯誤」をテーマに掲げ、来場者もスタッフも「自分の頭で考え、自分の手を動かして科学する」ような実験教室を創りあげることを目指しました。
今日はその企画の様子をご紹介するとともに、今回の実験教室でNSIとして得られたものについてまとめます。
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*目次
【1】実施概要
【2】はるにれ実験教室2015 で目指したもの
【3】実施企画
【4】はるにれ実験教室2015 から得られたもの

【1】実施概要

  • 6月6日(土) 13:00-15:30(15時入場終了)
  • 6月7日(日) 10:00-12:30(12時入場終了)
  • 場所:北海道大学 第二体育館

★はるにれ実験教室史上最高の来場者数

今回は天気と立地に恵まれ、2日間の延べ来場者数が760人(1日目527人、2日目233人)と、過去最高を記録しました。
例年は日曜午後の2〜3時間の開催で200〜300人程度だったので、特に1日目の人数は完全に想定外でした。。
しかも一度入ると長時間遊んでいく方が多く、中には2時間半まるまる楽しんだ方や、2日間に渡って来場した方もいらしたようです。
みなさまご来場ありがとうございました。

★スタッフ数は史上最少?

今回、当日に参加したスタッフ数は、北大祭から応援に来ていただいた事務局員も含め、1日目11人、2日目14人でした。
これは、はるにれ実験教室を体育館で開催するようになった2010年以降では、おそらく最少人数だったと思われます。
NSIは常に新規メンバーを大募集しております。興味のある方はお気軽にご連絡ください。(宣伝)

【2】はるにれ実験教室2015 で目指したもの

今回のはるにれ実験教室では、これまでとはまた違った新たなタイプの実験教室を目指してみました。まずはそのコンセプトをご紹介します。

★科学のおもしろさを伝える、「試行錯誤」の実験教室

今回のはるにれ実験教室は、タイトルを「求ム 失敗する勇気」とし、来場者にたくさん失敗し、試行錯誤することの楽しさを伝えることを目標に掲げ、開催しました。
よくある「不思議な現象が見られる」実験教室や、「見ていて楽しい」実験教室はもちろん面白いかもしれません。しかし、「科学のおもしろさ」は本当にそこにしかないのでしょうか?
私が科学をおもしろいと感じるのは、「新しいことを知る」だけではなく、「それを知ったことにより今まで見ていた景色が違って見えるようになる」という体験をしたときです。また実験の楽しさとは「自分の手で確認することができる」「自分の目で新たな発見をすることができる」という部分にあると考えています。
なので今回は、来場者が「自分の頭で考え、自分の手で実験し、自分の目で発見することができる」ような実験教室にしたいと考えながら、準備を進めました。

★「答え」の無い実験教室

企画は、基本的には「答え」を用意しない・用意することのできないものにこだわって用意しました。これは、NSIにとっての新たな挑戦となりました。
例えばこれまでにやってきたような「ある現象を取り扱う実験教室」では、実験教室を通して伝えたい「答え」があります。スタッフはそれを解説し、来場者がそれを理解することが実験教室としての成功につながります。しかしそれは、一歩間違えば来場者にとってはただの勉強であり、学校での授業の真似事をしているに過ぎなくなります。
また、NSIがはるにれ実験教室を始めた9年前には、北大祭の中に子供向けの企画はほとんどありませんでしたが、CoSTEPの活躍等でサイエンスコミュニケーションの発想・重要性が浸透することにより、近年では各学部や研究所による「実験教室」企画がたくさん催されるようになっています。これらの企画との差別化をはかることも、NSIにとってはひとつの課題となっています。
学校ではなく、特定の分野の研究紹介等を目的ともしない、NSIだからこそできる実験教室をつくりたいと考えたとき、一番に捨てるべきだと感じたのは「一方的に知識を伝えること」でした。
そのために、企画は基本的には「答え」を用意しない・用意することのできないものを用意し、来場者には好きなだけ試行錯誤してもらえるようにしました。

★「スタッフが一緒に楽しむ」実験教室

「知識を伝える」型の実験教室から脱却するために重要なのが、スタッフと来場者の関係性を変えることです。そこで、当日のスタッフにはとにかく「教えるのではなく、一緒に考え、一緒に楽しむ」ことを心がけてもらいました。
来場者に自分の頭で考えてもらうために、スタッフも来場者と同じ側に立ち、ともに「答えの無い課題」に挑む、そんな形の実験教室を作りたいと考えました。

★「スタッフも試行錯誤する」実験教室

試行錯誤の楽しさを伝え、「答え」を用意しない実験教室だからこそ、その中ではスタッフも試行錯誤を楽しみ、来場者とともに「ひとつではない答え」を探求します。
NSIは「科学をわかりやすく楽しく人に伝える方法を探求する」団体です。(NSIウェブサイトトップページ(http://tehiro.sakura.ne.jp/nsi/)より)
人に楽しんでもらうためには、まずは自分達も楽しむことが大切です。ゆえに、今回の実験教室で試行錯誤をするのは、来場者だけではありません。スタッフもまた、たくさんの試行錯誤を繰り返し、企画と、そして自分自身を成長させていきました。

【3】実施企画

今回は各企画の名前を「〜研究所」としました。
メイン企画4つ+隠し研究所2つの計6つの研究所を紹介します。

(1) レオナルドの橋 研究所

かのレオナルド・ダ・ヴィンチが考案したとされる通称「レオナルドの橋」を通して、「物を支える」ことを研究する研究所です。
来場者は、木の棒や割箸を使って、自分の手で橋を組み立てることができます。
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この橋、基本の組み方さえ覚えればそのまま長さを伸ばすことができるので、一度ハマるとどこまで長くできるかと挑戦したくなるようです。
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親子や友人同士で協力して橋作りに挑む姿も見られました。

またさらにその奥では、いろいろな形の木材(積み木)を使って、高くて頑丈なタワーをつくることを目指してもらうコーナーを設けました。
1日目は「高さ」のみでランキングを作っていましたが、単にバランスをとって高さを目指すだけでは考える余地が足りず、来場者の作るタワーが似たようなものになりがちでした。そこで2日目は「頑丈さ」の要素を加え、重りをどれだけ載せられるかという点も重視するようにしました。
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(2) 静電気研究所

いろいろな素材をこすりあわせて静電気を起こし、シャボン玉を操ってみよう!という企画。
シャボン玉を自在に操るためには、シャボン玉の方も帯電させなければならないのですが、予備実験ではうまくいっていた方法が、なぜか1日目はあまりうまくいかず…。
1日目終了後に改めて実験した結果、帯電させた塩ビ管で直接シャボン玉を作ると成功率が格段に上がることがわかりました。
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その結果、2日目には子供達にシャボン玉を自在に操る様子を見せたり、実際に自分で操って楽しんでもらったりできるようになりました。
ただ、シャボン玉は帯電していても「選んだ道具の組み合わせが間違っている」「操作の仕方が悪い」など失敗の原因が重なると修正することは難しく、なかなか子供達の試行錯誤につなげることは難しかったようです。

(3) ペーパーフライ 研究所

Eテレで放送中の「すイエんサー」という番組で使われていた企画を、NSI流に実験教室企画としてアレンジしてみました。
紙を高さ3mから落とし、その滞空時間の長さを競います。
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使っていいのはA4コピー用紙1枚と、ハサミ・のり・テープ。
今まで誰もやったことのないことだからこそ、大人も子供も同じスタートラインで競えます。折ったり切ったり、まさに試行錯誤を繰り返す来場者のみなさん。
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ちなみに今年のはるにれ実験教室での最高記録を叩き出したのは、この作品。
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作ったのはなんと4歳の女の子。
実はこの企画、「普通の紙をそのまま落とすと(ブレはあるものの)かなりの高記録が出てしまう」というのが問題点のひとつだったのですが、この作品はそんな「普通の紙」を超える謎の安定感を見せ、堂々の第一位に君臨しました。

(4) 紙ひこうき研究所

誰もが知っている紙ひこうき。
実は過去のはるにれ実験教室でも行ったことのあるこの企画は「自然と試行錯誤が生まれる企画」と考えられていました。
しかしいざ当日を迎えてみると、紙ひこうきを楽しむ人は多いものの、しっかり試行錯誤して自作の紙ひこうきの記録を伸ばす人は少なく… こちらの意図とは少し違った楽しみ方をされている場面が多く見られました。
そこで2日目は設置物のレイアウトを変更し、作り方のコツが書かれた「研究ノート」を目立つ場所に移動させました。また、スタッフがついて積極的に改善のアドバイスを行うようにすると、来場者の反応は全く違ったものになったようです。

(5) プリズム研究所(仮名)

2日目(日曜)にのみ設立された、隠し研究所です。
会場である第二体育館を飛び出し、玄関ロビーで勝手に研究所を展開させていただきました。
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この研究所では、かのニュートンも行ったとされる「プリズムによる分光」の実験を実際に自分達の手で再現することを目標としていました。
実はこの実験、一昨年の「色の実験教室」の際にも挑戦したのですが、室内で使用できる光源を用意するのになかなか苦労したのです。そこで今年は別のメンバーが、理想的な光源である太陽光でやってみようという話になりました。
ということで問題は当日の天気のみだったんですが、朝の時点では生憎の曇り空。。
窓際に陣取って準備はしたものの、やはりあまりうまくいかず、心が折れた研究員は独語論文の読解に移行。
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しかし昼近くになって、体育館にも文字通り光明が差し込んできました!
実験セットを太陽光のよく入る場所まで移動し、再挑戦。
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結果、プリズムで分光した光を、レンズとプリズムを使用して再度集光することに成功しました。

youtu.be

画面右側で動く白い光が、集光された白色光である…らしい。

(6) 「世界一簡単な構造の電車」研究所(仮名)

過去にyoutubeで話題になった「World's Simplest Electric Train 【世界一簡単な構造の電車】 - YouTube」が面白そうだということで、メンバーのひとりが制作に挑戦しました。

挑戦を開始した5月のかなり早い段階で磁石が割れるなど、前途多難の予感。。
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その後も、コイル作りに苦戦するなどして、
結局はるにれ実験教室前日まではほとんど動かなかったのですが、
前日準備でついに!!youtu.be

残念ながら実験教室当日は(主に人手不足が原因で)来場者に披露することはできませんでしたが、また機会があればぜひ挑戦し、来場者にも楽しんでもらいたい企画です。

【4】はるにれ実験教室2015 から得られたもの

最後に、はるにれ実験教室2015を経て得た気付きを、4つだけ挙げておきます。

★「試行錯誤」の実験教室は、大人も子供も楽しめる

準備段階では「子供に試行錯誤をさせるのは難しいのでは?」と懸念する場面もあったのですが、こちらが心配するより、子供はきちんと考えて取り組んでくれるようです。(むしろ大人の方が「子供向けの企画だから」と参加することを拒む姿が見られたような……もったいないですね)
また、特に親子で一緒に企画に取り組む姿が多く見られたのは良い傾向だったと思います。単純な問題ではなく、答えが用意されていないからこそ、大人も真剣に取り組めたり、時には子供の出したアイデアの方がうまくいったりして、親子でも対等な立場で取り組むことができるようでした。

★「答えが無い」だけではダメ、必要なのは「次の一歩を踏み出させる」工夫

はじめ、来場者に試行錯誤をしてもらうための企画は「答えが無い」ことが必要条件であり、その条件が満たされれば十分なのではないかとまで考えていました。しかしやってみた結果、それだけでは不十分で、企画の性質に合わせた工夫が必要であるということがはっきりとわかりました。
例えば紙ひこうき研究所で「紙ひこうきを作って飛ばすこと」自体は来場者のほとんどがこれまでに経験したことがあり、自然とできてしまうことでした。それゆえに、なんの工夫もしなければただ「紙ひこうきを飛ばした」だけで「実験が成功した」と誤解されてしまったのです。ここで必要だったのは「当たり前のことを考えさせる工夫」でした。
一方ペーパーフライ研究所では、その実験自体がみんなにとって初体験のものでした。しかしそこで他の人がやっている姿を見れば、どんなことをしたらいいのかがなんとなくわかり、最初の一歩を踏み出すことができます。
試行錯誤を促すためには、参加者が自然と到達できるポイントから、さらに考えを進め次の一歩を踏み出すためのヒントを与えてあげることが必要であるようです。

★企画の自由度は高すぎてもダメ

自由な部分が多すぎると前項で言うところの「ヒント」が与えづらくなるため、企画としてはやりにくいものになります。
静電気研究所では、シャボン玉が帯電するかどうかを除いたとしてもなお「道具の選び方」と「操作方法」の2つの決定権が来場者にあり、両方ともがうまくいかなければ成功とならないため、実験の失敗率が格段に上がってしまいました。
一方でペーパーフライ研究所では、来場者は作品を作るのみで、実験する(落として時間を測る)部分は全てスタッフが行いました。落とし方が違えば結果が変わる可能性もありますが、あえてその部分に自由度を与えないことで、来場者同士の結果を比較し、タイムを競う形の企画とすることができました。

★スタッフも試行錯誤して成長する

NSIメンバーのほぼ全員が新たな企画・新たなポジションに挑戦した今回の実験教室では、たくさんの失敗が生まれました。しかしそれは決してネガティブなものではなく、私達はその失敗の数だけ新たな発見をし、新たな知見を得ることができました。結果として、個々の企画もスタッフも大きく成長したように思います。
ある程度形の決まった「実験教室」をきちんと作り上げるだけでなく、時には失敗の許される環境で大いに挑戦することが、スタッフにとっては非常に良い経験になるのだと改めて認識することができました。

謝辞

毎年はるにれ実験教室を依頼してくださる北大祭事務局のみなさま、当日お手伝いに来てくださったスタッフのみなさま、NSIの活動やメンバー各個人を応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。
みなさまに支えられて今年も非常に有意義な実験教室を開催することができました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。