新・身近な科学

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貼紙と嘘つき

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは!NSIの岩山です。

まずは下の写真をご覧ください。

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某所で見かけたものですが、見てのとおり、「貼紙禁止」という貼紙、です。
思わずツッコミを入れたくなりますよね(^^)

こういった、正しそうな前提から受け入れがたい結論が導かれるものを「パラドックス」といいます。

パラドックスにはいくつかの類型がありますが、「貼紙禁止」は「自己言及のパラドックス」にあたります。
有名なものとしては「クレタ人は噓つきだ、とクレタ人は言った」という「嘘つきのパラドックス」が挙げられます。

そんなわけで、今日の「明日話したくなる科学豆知識」は、
「貼紙禁止」という貼紙は、自己言及のパラドックス
です。

モータのあれやこれ

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。


こんにちは、NSIのゾフです。

最近は電気自動車ハイブリッド自動車を始め,建機や農機などいろいろな機械の電動化が進んでいます。
そんな中,重要度を増しているのが,エンジンに変わる動力源,電気モータです。
今日はそんな電気モータについてざっくりとしたお話をしたいと思います。

モータはこれまでに様々なものに使われてきました。
例としては小さいものでは携帯電話のバイブや扇風機,大きなものでは冷蔵庫やエアコン,さらに大きなものでは電力会社などの大型発電機などがあります。
みなさんの周りには気が付かないだけでかなりの数の電気モータが使われています。
モータの消費電力は日本の消費電力全体の約6割とも言われています。
つまり,日本で使われている全モータの効率が1%上昇すれば原子力発電所1基分の電力削減にも相当します。
そのため,がんばって効率をあげようといろいろな企業で開発が行われています。

最初にお話したように,いろいろな機械で電動化が進んでいます。
これにはいくつか理由がありますが,一つは効率の問題があります。
これまで車などに使われてきたエンジンの効率は良くて30%程度だと言われています。
それに対して電気モータの効率は90%以上のものがほとんどです。
そのため,燃費を向上させるために電動化が進んでいるのです。
しかし,必ずしも電動化するのが良いわけでもなく,充電に時間がかかったり,価格が高かったりと様々な課題もあります。
そのため,メリットデメリットを天秤にかけながら電動化が進んでいるのです。

以上,モータに関してざっくりとお話させていただきました。
豆知識としては「日本で使われている全モータの効率が1%上昇すれば原子力発電所1基分の電力削減にも相当する」がいいのではと思います。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
明日以降もお楽しみに!

知っていますか?マッチのこと

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは、NSIのイソップです!

実は,2年前に学部時代の仲間とゲストライターとして参加していました!折角発掘したので,よろしければこちらもご覧くださいませ。

モミの木の持つ驚きの力 - 身近な科学

それはさておき,今日はタイトルにもある通り,「マッチ」に関する豆知識をご紹介します。

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まずは「マッチ」の歴史について。
世界で最初に開発されたマッチは1827年に開発されましたが,35℃程で自然発火したり,毒性があったりする「黄リン」を使用していたため,どこにこ擦りつけても火が点いてしまうという非常に危険なものでした。

そんな危険なもの使えないじゃないか!

ということで,1852年に現在,皆さんがよくご存じの「マッチ」が開発されました。
※黄リンマッチは,その毒性と自然発火の危険性から、1912年世界的に製造禁止となっています。

さて,こんな歴史がある「マッチ」。
正式には「安全マッチ」と呼ばれ,「軸木(じくぼく)」、軸木先端の「頭薬(とうやく)」、マッチ箱側面等にある茶色の「側薬(そくやく)」の3つで構成されています。それぞれにどのような特徴があるのか見てみましょう。

「軸木」:軸木燃焼後の残火防止のためのリン酸アンモニウム等を浸透させています。
「頭薬」:燃焼剤として硫黄,松脂,膠など,燃焼の手助けをする酸化剤の塩素酸カリウムなどが使われています。
「側薬」:発火剤の赤リンや硫化アンチモンなどが使われています。

この頭薬と側薬を擦ると,最初に「頭薬」の塩素酸カリウム(酸化剤)と,「側薬」の赤リンが反応して発火し,それが「頭薬」に燃え移るという流れになっています。つまり,マッチで最初に発火するのは側薬側なんです!(速すぎて見えないと思いますが…)
…ということで,「マッチで最初に発火するのは側薬の方である」を今日の豆知識としたいと思います。

本当かどうか確かめるとともに,他の人にも話してみてくださいね!


余談ですが,日本の家庭用マッチ最大手の兼松日産農林が,マッチの製造事業から撤退するとのニュースが…。時代の移り変わりを感じた今年の師走でした。
www.nikkei.com

明日もお楽しみに!!


参考サイト
[1]asahi.com:マッチはなぜ火がつくの? - ののちゃんのDO科学 - NIE - 教育
[2]マッチはどうして火がつくの|科学なぜなぜ110番|学研サイエンスキッズ
[3]http://www.match.or.jp/images/matchnohanashi.pdf
[4]燐寸百科・作り方

奇妙な幻

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

こんにちは、NSIの二世です。

早速ですが、みなさんに問題です。
この化石、元は一体どんな生物だったか想像できるでしょうか?
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実はこの生物には「奇妙な幻」を意味するハルキゲニアという名前がついています。

ハルキゲニアの化石は、5億年以上前の地層から発見されました。
そして面白いことに、実はその復元図が「たくさん」存在しているのです。


1977年、初めて発表された復元図では、7本の棘で歩く頭の大きな生物として描かれました。

しかし1992年には、その身体の上下と前後が反転し、頭とされていた部分は身体の一部ではなかったとされました。

さらに1995年、前後がまた反転し、やはり頭部はあったのではないかと言われていました。

そして2015年は、電子顕微鏡による観察で、ついにハルキゲニアの目と口(歯)が発見されました。
これにより、身体の前後が再度(3回目!)反転することになったのです。

最新の復元イメージについてはこちらの動画で見ることができます。

Hallucigenia walking

いかがでしょうか?
最初の化石からみなさんが予想した姿は、どのくらい近いものだったでしょう?

なお復元図は、描く人によって描き方や印象が全然違うので、興味を持った方はぜひ「ハルキゲニア」で画像検索をしてみてください。


ともあれ、何十年にもわたって研究者達に「幻の生物」の図を描かせてしまうハルキゲニアの化石は、とても魅惑的な存在だと思いませんか?


以上、ハルキゲニアという生物は、研究が進む度にその姿が大きく変わってきたという豆知識でした。


明日もお楽しみに!

「分子マシン」がもたらすもの

※本記事はアドベントカレンダー「明日話したくなる科学豆知識4」(http://www.adventar.org/calendars/1675)の一環として書いています。

はじめに

こんにちは!NSIの岩山です。

1年は早いもので、ついこの間年が明けたと思ったら、もう12月です。

今年もNSIでは、アドベントカレンダーを作成します!
過去3年と同じ「明日話したくなる科学豆知識」というテーマで、4年目の今年完走すると、めでたく100記事となる節目の年となります。
今日から25日間、ゆるりとお付き合いいただけると幸いです(^^)
過去3年の記事についてもぜひご覧くださいませ。

2013年→ 明日話したくなる科学豆知識 Advent Calendar 2013 - Adventar
2014年→ 明日話したくなる科学豆知識2 Advent Calendar 2014 - Adventar
2015年→ 明日話したくなる科学豆知識3 Advent Calendar 2015 - Adventar

今日の豆知識

さてさっそく、初日の豆知識に入りたいと思います。

私、大学では化学を専攻していました。
なので、ノーベル賞の中で一番注目するのは化学賞なのですが、化学賞は幅が広く、物理っぽいものや生物っぽいものが選ばれることも多くあります。

そんな中で、今年のノーベル化学賞は久しぶりにザ・化学といった感じだったので、今日はそれについての豆知識をご紹介します。

今年のノーベル化学賞は、「分子マシンの設計と合成」という業績について、フランスのジャンピエール・ソバージュさん、イギリスのJ・フレーザー・ストッダートさん、オランダのバーナード・フェリンガさんの3人に授与されました。

「分子マシン」とは、機械的な動きをする分子あるいは分子複合体のことで、分子スケールのナノメートルくらいの大きさです。
・・・というのは釈迦に説法でしょうか(^^;)

今回ご紹介したいのは分子マシンそのものについてではなく、今回の授賞にあたってノーベル財団から出されたコメントです。
ちょっと長いですが、以下ご紹介します。僭越ながら、日本語訳もつけてみました。

In terms of development, the molecular motor is at the same stage as the electric motor was in the 1830s, when scientists displayed various spinning cranks and wheels, unaware that they would lead to washing machines, fans and food processors. Molecular machines will most likely be used in the development of things such as new materials, sensors and energy storage systems.

ノーベル賞ウェブサイト 2016年化学賞プレスリリースより抜粋

(拙訳:進歩という観点において、分子モーターは、1830年代の電気モーターとちょうど同じステージにある。そのころ、科学者たちはクランクや車輪を回して見せていたが、それが洗濯機や扇風機、フードプロセッサーへつながることになるとは思っていなかった。今後、分子マシンが新しい材料やセンサー、エネルギー貯蔵システムといったものの発展に寄与していくことは間違いないだろう。)

1830年代というのは、産業革命の最初期のころです。
歴史の教科書でしか見ることができないものだと思っていた産業革命と同じことが、今まさに起こりつつあるなんて、とってもロマンがあることだと思いませんか?
今はまだ小さな分子の世界のできごとですが、やがて、今は想像もできないような大きな変革となって私たちの目の前に現れるような、そんな想像をするだけでワクワクします(^^)

そんなわけで、今日の「明日話したくなる科学豆知識」は、ちょっと願望も込めて、
分子マシンの発展は、産業革命に匹敵するような大きな変革をもたらすだろう
としたいと思います。